人生最大のピンチ!を乗り越えた仕事人たち:
妙法寺住職
PROFILE
久住謙昭(43)
神奈川県東戸塚の妙法寺で住職を務める。
人々に身近なお寺、仏教のありかたについて、
伝統や本質を守りながらも、現代社会に適応したお寺の姿、
仏教の姿を求め、発信を続けている。
ーさっそくなんですが…お腹は弱いですか?
そうですね…、弱いです(笑)。例えば、お葬式の前でもお腹が痛くなるんですよね。だけど、いざ始まると痛さは忘れているかも。それより、目の前のことに集中してます。最後のお別れですしね。けど終わった瞬間、痛かったことを思い出したり…。そういうときは、急いで袈裟を脱ぎ、お手洗いへ駆け込みます(笑)。
ーなるほど…! 集中していると忘れるものなんですね。
ただ、修行中はありました。私のお寺の日蓮宗という宗派には、100日間の荒行があって。千葉県にある法華経寺というお寺で修行をするんです。11月1日から、2月10日までの冬の期間ですね。
ー100日間!?
はい、その間は一切外に出れません。一日に7回行水を行い、朝と夕に2回おかゆを食べて、それ以外はお経を読んだり、写経をしたり。睡眠時間も短いので、つねに寝不足だし、お腹が空いていて。それも、冬ですからね。寒さも加わります。
ー修行中は何を着ているんですか?
白い麻の衣で、「清浄衣(しょうじょうえ)」というんです。僧侶がこれを着る時って、2回しかなくて。この修行のときと、自分が死ぬときなんですよね。麻って通気性がいいからものすごくスースーして…。寒い・眠い・お腹空いた、そんな三拍子の状態でお経を読みます…。
ーえー、大変…。
お坊さんって、定期的に修行へ行くことが大事だと思っています。何事も便利な時代ですから、一度そういうものを絶って、自分と仏様が命をかけて向き合うことが必要で。おのれの中にある、全ての悪いことを修行で吐き出し、絞り出してこそ、お坊さんとしての清らかな体が出来上がるんです。
ー納得です…。そんな修行中、いつピンチが訪れたんですか?
お堂でお経を読んでいるときですね。その間、長くて2時間くらいですかね。無論、一切外へ出れません。そんななか、お堂も寒いですし…。お経を読んでると、やっぱりお腹が痛くなるんです。
ーお手洗いには行けないんですか?
途中で立ち上がって、小学校みたいに「はい、先生! トイレ行っていいすか!」なんて言えないんです(笑)。修行はとてつもなく厳しくて。だから、ひたすら我慢して、波が去るのを待つしかない…。
ー2時間、どうやって乗り越えたんですか?
大きな声でお経を読むんです。もう、そうやって自分の気持ちを誤魔化すしかないですよね。一心不乱に、一生懸命に、大きな声でお経を読んで…。心の中で、仏様に助けを求めていました…。
ーそのあとお手洗いには?
行けるんですが、あまり長時間入っていられないんです。また、次に行う修行が待っておりますので…。
ーなるほど…。
そのときは薬もよっぽどのことが無いと飲めませんでした。いまは職業柄、緊張する場面も多いですし、プロとしての責任感もあるので、もしものために携帯しておきたいです。正露丸クイックCは小さくて飲みやすそうだし、早く溶けるということは、早く自分の職務に集中できるということ。とても良さそうですね。